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原因の確定の難しい歯髄炎・歯根膜炎様症状


 歯髄炎・歯根膜炎症状は、歯科医にとって日常的にであう機会のもっとも多い疼痛疾患といえます。 患者さんも”ぐらついてもない歯”が痛くなればムシ歯だろうかと、歯科医院に訪れるわけですが、90パーセント以上は確かに憶測の通りで、通法の処置が奏功するわけです。 しかしながら一部には、歯に腐りがなければ、亀裂もないし、歯周病の関与も考えられず、噛んでも症状が強くなるわけでもないといった状況なのに、なんだか分からないがとにかく痛いといったケースがあり、 処置によって除痛をしなければならない歯科医にとっては厄介な症例となります。

 歯内療法については重鎮ともいえる某ベテラン歯科医が、来院した患者さんの生活歯の痛みを歯髄炎の診断のもと、その歯の神経を取ったのですが、それでも痛みは収まらず結局歯を抜くことになってしまったそうです。 ところが抜いたはずの部位にはなお痛みが残ったため、治療は周辺歯にもおよび、神経を取る→歯を抜く、を繰り返すことになってしまいました。 結局痛みに変化はなく当然のことで患者さんはドロップアウトしてしまいます (患者さん談)。 これは経験豊富なこの専門領域のリーダーといえる方でさえ、成功体験に基づいた歯内療法的見地でしか歯牙に発生する疼痛を捉えられなかったという実例ですが、現実にはこのような事例はたくさんあると考えられます。

 歯内療法・根管治療に関わる問題は炎症所見が顕現することがない場合も多く、状況に応じ多様な痛みを発現するうえ、歯科領域の疼痛の2/3くらいが該当いたします。 そのため口腔顔面痛の専門医が指摘するように、歯牙の強い痛みで受診をされた場合、患者さんの訴えの解消に追い詰められた歯科医は、確定した診断もできないまま、経験的に抜髄(神経を取る)・根管治療をやり直す・抜歯等をおこなう事となってしまう傾向にあるようです。 謙虚な臨床家が解消困難な痛みに遭遇する場合、多くはみずからの治療技術の拙さと悩むものですが、実際はさまざまな疼痛発現の機序があり、病理学的、神経生理学的な痛みの発生パターンというものも診断のレパートリーに加えなくてはなりません。 

 
歯科治療における最も難易度の高い処置である根管治療は日本の保険制度では重きをおかれていませんが、それにも起因する日常的な不快症状の再発は、失活歯に痛みがあれば、歯根破折を疑うか再治療という考えを当然視させてしまっています。 根管治療に問題は考えられないから、それ以外の原因を探ろうというわけにはなかなかいかないのが現状です。 本質的な問題を追及し確定診断をするには整理された情報が必要ですが、診断に一番関わることに曖昧性があっては、ものごとを峻別し問題点を抉り出すようなポジティブな分析ができません。

 Site of Pain と Source of Pain という考えかたは、関連痛などに見られる痛みを感じる部位と痛みの原発部位の相違が前提になっていますが、ほかにもいろいろな原因によって、口腔・顔面領域にさまざまな疼痛が発生することが理解されるようになってまいりましたが、歯科においては痛みが日常的であり、生命に関わることも稀なため、痛みの終息があれば診断・処置の再評価はおこなわれにくく、ペインクリニックのような痛みに対する専門的アプローチができにくい環境にあります。 

  以下に列挙するのは、具体的に歯に感じる痛みとして歯内療法・根管治療に関わる問題と混同しやすい各種の状態や原因ですが、これらは推測もあり必ずしも神経生理学的に解明されたものばかりではありませんことをお断りいたします。 今後可能な範囲でわかりやすく図解、説明してまいります予定です。

・歯軋り、噛みしめ、喰いしばり由来の歯根膜炎

・筋筋膜トリガーポイント関連痛としての異所性疼痛

・帯状疱疹ウイルス(水痘:みずぼうそう後の不顕性感染由来の)三叉神経支配領域の感染によっておこされる、一過性の急性歯髄炎様症状(激痛)

・群発頭痛・(片頭痛)時におこり得る歯の激痛

・いわゆる非定型歯痛 Atypical Odontalgia < いわゆる神経因性疼痛 neuropathic pain、 疼痛性障害(身体表現性障害) somatoform disorders その他原因不明の歯痛 >

 

 

*口腔顔面痛治療を広く紹介されております井川先生の情報サイト(Orofacialpain.Info) では、専門家にAOと呼称される非定型歯痛(Atypical Odontalgia)についての紹介が多くありますが、そのなかの文献情報 には、一般歯科医が診断困難と考えられるような、海外の数々の症例の検討がおこなわれています。

*口腔顔面痛専門医の正司先生の情報サイト(OFP CENTER HOME PAGE) では、筋筋膜トリガーポイント関連痛の由来の関連痛の等について分かりやすいアニメーション等があります。

 

 

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